「バカの壁」

2003年8月19日

最近、東大名誉教授・養老孟司著の「バカの壁」という本を読みました。「バカの壁」とは一言でいえば、現代人の思考停止を招いてる状況、すなわちいかに考えることなく己の周囲に見えない壁を作ってしまっているかということについて書かれた本です。その中に、人間は変化するが情報は変化しないというフレーズがあり、即ち万物は流転するが、「万物は流転する」という言葉は流転しない、それはイコール情報が流転しないということであり、一方人間は常に変わっているということが書かれています。
これはいわゆる般若心経でいう「色即是空、空即是色」(すべての事物は関係しながら変化を続ける」にも共通する概念であると思います。
とかく、私たち人間は、昨日の自分=今日の自分と考えていますが、もちろん大まかな意味ではもちろん同一人物なのですが、エネルギー学的にみると、人間のエネルギーとしては刻一刻として同じ状態というのはありえないわけです。だけれども、いつまでも過去の自分にしがみついていたり、こだわりを手放さなかったりしている状態というのは、言ってみれば自然の法則に逆らっているともいえるかもしれません。
上記の「色即是空、空即是色」や、平家物語の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」(鐘の音は物理的にはいつも同じように響くが、その時々で違って聴こえるのは、聞く自分の気分が違うからである)や、方丈記の「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」(川がある、それは情報だから同じだけど、川を構成している水は見るたびに変わっている)という昔からある言葉自体は全く変わることなく、現在に受け継がれています。でもそれを受け取る人間自体は刻一刻と変化しています。
人間は変わる、変わることができると考えれば、「バカの壁」というのは、実は見えないこだわりやしがらみ、強いては過去の自分のことを指すとも考えられるかもしれません。ですから、逆にその見えない壁さえ取り払えば、自分自身の真我、即ち本当の自分とつながり、全てのエネルギーがうまく流れ出すのかもしれませんね。

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